不動産投資に興味がある方の中には、いくらから始められるか、必要な自己資金、初期費用が気になっているという方もいるのではないでしょうか。
必要な初期費用を把握したうえで、自己資金が足りない場合の対処方法も理解しておくと、不動産投資を始めることがクリアにイメージできます。不動産投資を始める前に、まずは自己資金がいくらあればよいのかを把握しておきましょう。
この記事では、不動産投資を始めるにあたって必要な自己資金や初期費用と、自己資金が足りない場合の対処方法についてご紹介します。
もくじ
不動産投資の初期費用の目安は物件価格の10%〜15%

不動産投資を始める際に必要となる初期費用の総額は、一般的に物件価格の10%〜15%が目安とされています。これには、後述する各種手数料や税金といった「諸費用」と、物件価格の一部を先に支払う「頭金」が含まれます。
不動産購入に必要な初期費用の主な項目

不動産投資にはさまざまな初期費用がかかり、節約できる項目もあれば、各種税金のような固定額の項目もあります。また、支払いのタイミングもさまざまです。物件の売買契約から間もなく支払う必要がある項目もあれば、準備はしておいても支払いは数か月後という項目もあります。
1.不動産仲介手数料
物件を購入する際、不動産会社が仲介するのであれば、原則として「不動産仲介手数料」を支払います。これは物件の売買契約が成立したあとに支払う手数料であり、一種の成功報酬です。
不動産仲介手数料の上限額は、売買価格が200万円までや400万円までの部分と、1,000万円をこえる部分で計算方法が異なります。400万円をこえる物件の場合は、「売買価格×3%+6万円+消費税」で上限額の算出が可能です。
これはあくまで上限額であり、実際の請求額に一致するとはかぎりません。たとえば、新築ディベロッパーから直接物件を購入する場合は無料です。不動産会社が売り手・買い手双方と契約して仲介を行う場合には基本的に手数料がかかりますが、中古マンションなら割安であったり無料であったりするケースもあります。
2.不動産投資ローンの事務手数料・保証料
一般的に、不動産投資ローンを組む際には、金融機関に支払う事務手数料や保証料がかかります。事務手数料の計算方法には定額制と定率制があり、定額制の相場は3万円ほどです。
不動産投資ローンは1,000万円や1億円という単位の高額な融資であるため、多くの金融機関で保証会社を連帯保証人とします。ここで発生する保証料は、一括払いなら融資総額の2%ほど、金利上乗せなら0.2%~0.3%ほどが相場です。
ただし、金融機関期間によって審査基準は異なり、事務手数料や保証料にも幅を設けています。基本的に、不動産投資の実績がない初めての融資であれば、最低額とはなりません。金融機関によっては、事務手数料や保証料の片方か両方を無料としているケースもあります。
3.火災保険料
不動産投資ローンは、購入する物件そのものを担保として借り入れます。物件の収益性が高いほど融資に有利ですが、物件が損害を受けることは金融機関にとっての大きなリスクです。そこで多くの金融機関では担保を保証するために、不動産投資ローンを組むにあたって火災保険への加入を義務づけています。
火災保険料の計算方法は、物件を再建築する際にかかる費用で算出する「再調達価額(新価額)」と、再調達価額から物件の経年劣化や消耗分を差し引いた「時価額」の2種類です。
火災保険料は物件の構造によって大きく異なり、耐火性能の低い木造は、RC(鉄筋コンクリート)造より3倍ほど高いケースがあります。また、長期保険のほうが火災保険料は安くなり、RC造のマンションの場合は10年間で10万円ほどが目安です。
4.印紙代
物件を購入する際には、「不動産売買契約書」や「金銭消費貸借契約書」といった課税文書を作成します。物件の売買契約を締結するのが不動産売買契約書で、不動産投資ローンの借り入れで必要になるのが金銭消費貸借契約書です。
これらの課税文書には、記載する契約金額に応じた「収入印紙」を貼りつけて消印をします。課税文書に収入印紙を正しく貼ることで、印紙税を納める仕様です。
1,000万円以下や5,000万円以下といった契約金額に応じて、正しい金額の収入印紙を貼りつける必要があります。印紙税額は年度により変更となるケースがあるため、国税庁の公式情報を参照しましょう。
5.登録免許税
物件を購入する際には、いくつかの登記を行う必要があります。たとえば、中古マンションを購入するなら「所有権移転登記」、不動産投資ローンを組むなら「抵当権設定登記」などです。これらの登記の手続きの際に納める国税を、「登録免許税」といいます。
所有権移転登記の場合、建物や土地の課税標準額に税率をかけたのが登録免許税額です。この課税標準額は、市町村が保管する「固定資産課税台帳」に記載された金額であり、物件の購入価格ではありません。建物にかかる税率は2%、土地にかかる税率は1.5%(2021年3月31日まで)です。
抵当権設定登記の場合、課税標準額に0.4%をかけて登録免許税額を算出します。この課税標準額は、債権金額、つまり借り入れた金額です。
6.不動産取得税
「不動産取得税」は、建物や土地を取得した際に課税される地方税です。物件を無償で譲り受けたとしても課税されるため、この税金は節約できません。
不動産取得税額は、課税標準額に税率をかけて算出します。この課税標準額は、所有権移転登記と同じく、固定資産課税台帳に記載された金額です。建物も土地も税率は4%ですが、2021年3月31日までに取得するなら3%となっています。
購入価格が安く見える物件であっても、固定資産課税台帳に記載された金額が高ければ、不動産取得税は高額です。納税通知書は物件の取得から3か月~6か月ほど遅れて届くため、事前に支払いの準備をしておきましょう。なお、取得するのが新築マンションであれば、大幅な軽減措置が受けられる特例もあります。
7.固定資産税・都市計画税
地方税である固定資産税や都市計画税は、1月1日時点で固定資産課税台帳に記載されている物件の所有者に対して、毎年課税されます。納付期限は自治体によって異なり、納税通知書が届くタイミングも4月や5月など一律ではありません。
物件を購入すると所有者は売り主から買い主へ移転し、購入した年度には売り主に納税通知書が届きます。そのため初年度の固定資産税や都市計画税は売り主が一括して支払い、購入日から12月31日までの部分の日割りをして清算するのが一般的です。
固定資産税額は課税標準額に1.4%、都市計画税額は課税標準額に最高0.3%をかけて算出します。この課税標準額は、固定資産税課税台帳に登録されている固定資産税評価額です。
8.司法書士報酬
物件を購入する際に必要な所有権移転登記や抵当権設定登記は、手続きに法務の専門的な知識を必要とします。登記は自分で行うことも可能ですが、法務の専門家である司法書士に依頼することが一般的です。
司法書士に取引の立ち会いや登記の手続きを依頼する場合、司法書士事務所が設定する報酬を支払います。報酬の設定は司法書士事務所によって異なり、総額で10万円~15万円ほどになることが一般的です。
相場より安い報酬設定の司法書士事務所もありますが、必要な手続きの全部を依頼するなら、どこに依頼しても内容に変わりはありません。遠方の司法書士事務所に依頼すると出張費が別途発生するケースもあるため、近隣で報酬の安い司法書士事務所に依頼するとよいでしょう。
9.物件の頭金
頭金は、物件価格の一部として、ローンを利用せずに自己資金で支払うお金のことです。これは手数料や税金といった「諸費用」とは区別されます。
頭金を多く入れることで、借入額を減らし、月々の返済負担を軽減したり、ローン審査で有利に働いたりするメリットがあります。自身の資金状況と将来の返済計画を考慮し、適切な金額を設定することが重要です。
不動産投資の初期費用を安く抑える3つの方法

ここまで解説してきたように、不動産投資には様々な初期費用がかかります。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、これらの費用を賢く節約することが可能です。
ここでは、初期費用を安く抑えるための具体的な3つの方法をご紹介します。少しの工夫で数十万円単位の差が生まれることもあるため、ぜひ参考にしてください。
売主物件を選んで仲介手数料を節約する
初期費用の中で大きな割合を占める仲介手数料ですが、不動産会社が自ら所有している物件(売主物件)を購入する場合、仲介手数料はかかりません。これは、売主と買主の間に仲介者が存在しないためです。
ウェブサイトなどで物件を探す際に、「取引態様」という項目を確認し、「売主」と記載されている物件を選ぶことで、100万円以上かかることもある仲介手数料をまるごと節約できる可能性があります。
金融機関や保険会社を複数比較検討する
不動産投資ローンの事務手数料や保証料は、利用する金融機関によって大きく異なります。同じ物件であっても、A銀行とB銀行では諸費用にいくらかの差が出ることも珍しくありません。
金利だけでなく、初期費用も含めた総支払額で比較検討することが重要です。
同様に、火災保険料も保険会社やプランによって様々です。不動産会社から提案された保険にそのまま加入するのではなく、複数の保険会社から見積もりを取り、自身の物件に必要な補償内容を吟味することで、保険料を最適化できます。
担保評価の高い物件を選ぶ
金融機関は、融資の際に物件の価値(担保評価)を厳しく審査します。この担保評価が高い物件は、金融機関にとって貸し倒れのリスクが低いと判断されるため、好条件で融資を受けやすい傾向にあります。
例えば、駅からの距離が近い、築年数が浅い、管理状態が良いといった物件は、担保評価が高くなる傾向があります。融資額が伸びれば、その分自己資金として用意する頭金を少なくすることができ、結果的に初期費用を抑えることに繋がります。
物件選びの際は、収益性だけでなく、金融機関からの評価という視点も持つことが大切です。
まとめ

不動産投資を始めるにあたっては、初期費用を支払ったうえで賃貸経営のリスクにも対応していける、十分な自己資金を準備しておくことが重要です。初期費用には節約ができる項目もあるため、事前にしっかりと計算をして、不動産投資の計画に生かしましょう。
