将来の資産形成の手段として注目を集める不動産投資。しかし、「もし失敗したら…」という不安から、一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
実際に不動産投資の「失敗率」はどのくらいなのか、気になるところです。
この記事では、不動産投資の失敗率に関する実態から、失敗してしまう主な原因、そしてその具体的な対策までを詳しく解説します。
不動産投資におけるリスクを正しく理解し、確かな知識を身につけることで、漠然とした不安を解消し、より堅実な一歩を踏み出すための一助となる情報をお届けします。
もくじ
不動産投資の「失敗率」の実態とは?

不動産投資に興味を持つ多くの方が気になるのが、「失敗する確率」ではないでしょうか。
結論から申し上げると、不動産投資の失敗率に関する公的な統計データは存在しません。しかし、様々な調査から、ある程度の傾向は見えてきます。
公的な統計データは存在するのか?
前述の通り、国や公的機関が発表している不動産投資の失敗率に関する明確な統計データはありません。これは、「失敗」の定義が投資家それぞれの目的や状況によって大きく異なるため、一律に集計することが難しいからです。
例えば、毎月のキャッシュフローが赤字でも、最終的な売却益でトータルリターンがプラスになれば成功と考える人もいますし、節税が主な目的であれば、一時的な赤字は許容範囲と考える人もいるでしょう。
業界で語られる失敗率の目安
公的なデータはないものの、民間企業やメディアによる調査はいくつか存在します。
例えば、不動産ポータルサイト「健美家」が収益物件の保有者・元保有者に対して行ったアンケート調査では、約4割の人が「不動産投資で失敗したことがある」と回答しています。
ただし、このような数字はあくまで目安であり、投資の目的や物件の種類、個人の知識や経験によって大きく変動することを理解しておく必要があります。
「失敗」の定義は人によって異なる
不動産投資における「失敗」の定義は、投資家が何をもって成功と考えるかによって異なります。一般的に考えられる失敗の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- キャッシュフローの赤字が継続する(家賃収入よりもローン返済や経費が多い状態)
- 物件売却時に購入価格を下回り、トータルで損失が出る
- 空室が長期化し、想定していた家賃収入が得られない
- 予期せぬ高額な修繕費が発生し、収支計画が大幅に狂う
重要なのは、ご自身の中で「どのような状態になったら失敗とみなすのか」という基準を明確にしておくことです。
なぜ不動産投資で失敗してしまうのか?主な原因を分析
不動産投資で失敗する背景には、いくつかの共通した原因が存在します。これらの原因を事前に理解し、対策を講じることで、失敗のリスクを大幅に軽減することが可能です。
空室が埋まらず家賃収入が得られない
不動産投資の収益の柱は家賃収入です。そのため、空室が長期間続くと収入が途絶え、ローンの返済や経費の支払いが自己資金から持ち出しとなり、経営を圧迫します。
空室が発生する主な要因としては、立地条件の悪さ、周辺の賃貸需要の読み誤り、物件の魅力低下(老朽化、競合物件の出現など)、不適切な家賃設定などが挙げられます。
健美家の調査によれば、不動産投資で失敗した理由の第1位は「空室の長期化」で、約36%の人が経験しています。
想定外の修繕費や運営コストの発生
建物は経年劣化するため、定期的な修繕やメンテナンスが不可欠です。
しかし、購入前に物件の状態を十分に確認しなかったり、長期的な修繕計画を立てていなかったりすると、想定外の高額な修繕費が発生し、収支計画を狂わせる原因となります。
例えば、給排水管の交換、屋根や外壁の修繕、設備の故障などが挙げられます。また、管理費、固定資産税、火災保険料などの運営コストも考慮に入れておく必要があります。
| 発生しうる想定外のコスト | 具体例 | 対策のポイント |
| 大規模修繕費 | 外壁塗装、屋上防水、給排水管更新 | 長期修繕計画の策定、修繕積立金の確保、建物診断の実施 |
| 突発的な修繕費 | 給湯器故障、エアコン故障、雨漏り | 定期的な点検、予備費の確保 |
| 運営コストの変動 | 管理費の値上げ、固定資産税の増額、保険料改定 | 最新情報の収集、余裕を持った資金計画 |
物件選定の判断ミスと情報不足
不動産投資の成功は、優良な物件を選べるかどうかに大きく左右されます。
しかし、情報収集を怠ったり、利回りなどの表面的な数値だけに注目してしまったりすると、将来性の低い物件やリスクの高い物件を選んでしまう可能性があります。
例えば、周辺の家賃相場や競合物件の状況、人口動態、地域の再開発計画などを十分に調査せずに購入してしまうケースです。
また、不動産会社の言うことを鵜呑みにしてしまい、自分自身で物件の価値を判断できなかった場合も失敗につながりやすくなります。
不適切な資金計画とローン返済の困難
不動産投資では多くの場合、金融機関からの融資を利用します。
しかし、自己資金の割合が低すぎたり、返済能力を超える過大なローンを組んでしまったりすると、金利の上昇や家賃収入の減少など、少しの変動で返済が困難になるリスクがあります。
また、ローンの種類(変動金利か固定金利か)や返済期間、諸費用なども含めた詳細な資金計画を立てることが重要です。返済比率(家賃収入に占めるローン返済額の割合)が高すぎると、空室期間の負担が大きくなります。
信頼できない不動産会社や管理会社との契約
不動産投資は、物件探しから購入、そして購入後の賃貸管理まで、不動産会社や管理会社と長く付き合っていくことになります。
しかし、中には自社の利益のみを追求する悪質な業者や、管理能力の低い会社も存在します。信頼できないパートナーを選んでしまうと、不利な条件で契約させられたり、適切な管理が行われず空室が増えたりするリスクがあります。
不動産投資で失敗しやすい人の共通点

不動産投資で成功する人がいる一方で、残念ながら失敗してしまう人もいます。失敗しやすい人には、いくつかの共通した特徴や行動パターンが見られることがあります。
これらを事前に知っておくことで、自身が同じ轍を踏まないように注意することができます。
投資目的が曖昧で計画性がない
何のために不動産投資を行うのか、具体的な目標が明確でない人は、物件選びの基準も曖昧になりがちです。その結果、勧められるがままに物件を購入してしまったり、場当たり的な運用になったりして、失敗のリスクを高めます。
また、出口戦略(いつ、どのように物件を売却するのか)まで含めた長期的な計画を立てていない場合も同様です。
情報収集を怠り勉強不足である
不動産投資には、物件情報だけでなく、市場動向、税金、法律、金融など、幅広い知識が必要です。
しかし、これらの情報収集や勉強を怠り、知識が不足したまま投資を始めてしまうと、リスクの高い物件を選んでしまったり、予期せぬトラブルに対応できなかったりする可能性が高まります。
不動産会社の営業担当者の話を鵜呑みにせず、自身でも書籍やセミナー、信頼できる情報源から学ぶ姿勢が重要です。
不動産会社や営業担当者任せにする
不動産会社や営業担当者は、不動産投資の専門家ではありますが、彼らの提案が必ずしも自分にとって最適とは限りません。物件のメリットばかりを強調し、リスクについては十分に説明しないケースも考えられます。
提案された情報を鵜呑みにし、自分で調べたり考えたりすることをせず、全てを任せきりにしてしまうと、不利な条件で契約してしまったり、リスクの高い物件を購入してしまったりする可能性があります。
短期的な利益ばかりを追求する
不動産投資は、基本的に長期的な視点で取り組むべき投資です。
しかし、目先の利回りの高さや、短期的な節税効果などにばかり目を向けてしまうと、長期的に見て収益性の低い物件や、将来的に価値が下がる可能性のある物件を選んでしまうリスクがあります。
例えば、高利回りを謳っていても、実際には修繕費が多くかかったり、空室が頻繁に発生したりする物件も存在します。
不動産投資の失敗を回避するための具体的な対策
不動産投資における失敗は、適切な知識と準備、そして慎重な判断によって大部分を回避することが可能です。ここでは、失敗を避けるための具体的な対策について解説します。
明確な投資目標と計画を策定する
まず、何のために不動産投資を行うのか、具体的な目標を設定することが重要です。
例えば、「毎月5万円のキャッシュフローを得る」「10年後に資産を倍にする」「老後の安定収入を確保する」など、目標が明確であれば、それに合った物件選びや資金計画、運用戦略を立てることができます。
また、目標達成までの期間や、万が一の場合の出口戦略(売却など)も具体的に計画しておきましょう。
徹底した物件の情報収集
物件選びは不動産投資の成否を左右する最も重要な要素の一つです。
物件の立地(駅からの距離、周辺環境、将来性など)、建物の状態(築年数、構造、修繕履歴など)、家賃相場、入居者層、競合物件の状況などを徹底的に調査しましょう。
また、複数の不動産会社から情報を集め、比較検討することも有効です。
無理のない資金計画とローン戦略を立てる
自己資金は物件価格の2割以上を用意するのが一般的ですが、諸費用(登記費用、不動産取得税、仲介手数料など)も考慮に入れる必要があります。
ローンを利用する場合は、返済比率(家賃収入に対するローン返済額の割合)を無理のない範囲に設定し、金利タイプ(変動金利、固定金利)や返済期間を慎重に選びましょう。
空室や家賃下落、金利上昇などのリスクも想定し、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
信頼できる不動産会社と管理会社を選ぶ
不動産投資のパートナーとなる不動産会社や管理会社の選定は非常に重要です。実績や評判、事業年数や支援範囲などを複数の会社で比較検討しましょう。
契約内容をしっかりと理解し、不明な点は納得いくまで質問することが大切です。
| 信頼できる会社の選び方ポイント | 確認すべき事項 | 注意点 |
| 事業年数がどれくらいか | 不動産事業について、どれくらいの年数実施しているか | 30年以上なら老舗として、信頼できます |
| 支援範囲 | 不動産販売のみの支援か、その他の支援もしてもらえるのか | 賃貸・建物管理や売却を見据えた出口戦略などをオールインワンで対応できる会社は、専門性が高く信頼できます |
| 実績と評判 | 設立年数、取引実績、顧客からの評判(口コミサイト、紹介など) | 極端に良い評判ばかりのサイトは注意が必要 |
| 担当者の質 | 不動産投資に関する知識、提案力、リスク説明の丁寧さ、レスポンスの速さ | メリットばかりを強調し、デメリットを説明しない担当者は避ける |
| 契約内容の透明性 | 手数料、管理委託契約の内容、解約条件などが明確に記載されているか | 不明瞭な点や不利な条項がないか、契約書を隅々まで確認する |
| アフターフォロー | 購入後のサポート体制、賃貸管理の具体的な内容、トラブル発生時の対応フロー | 「売ったら終わり」ではなく、長期的なパートナーシップを築けるかを見極める |
リスク分散と各種保険への加入を検討する
不動産投資には、空室リスク、家賃滞納リスク、災害リスク、金利上昇リスクなど、様々なリスクが伴います。
これらのリスクを完全にゼロにすることはできませんが、分散投資(複数の物件に投資する、異なるエリアに投資する)や、火災保険・地震保険・家賃保証保険など、各種保険に加入することでリスクを軽減することが可能です。
どのようなリスクがあり、それぞれに対してどのような対策が有効かを理解し、準備しておくことが大切です。
不動産投資で成功するための心構えとは?
不動産投資で成功を収めるためには、適切な知識や戦略だけでなく、長期的な視点や学び続ける姿勢、そして冷静な判断力といった心構えも非常に重要になります。
長期的な視点で運用を続ける
不動産投資は、株式のデイトレードのように短期で大きな利益を狙うものではなく、長期的な視点で資産を形成していく投資です。短期的な市場の変動や空室に一喜一憂せず、じっくりと腰を据えて運用を続けることが大切です。
物件の価値は時間とともに変動し、家賃収入も安定するまでには時間がかかることもあります。長期的な計画に基づき、忍耐強く取り組む姿勢が求められます。
常に学び続け市場の変化に対応する
不動産市場や関連法規、税制などは常に変化しています。過去の成功体験が将来も通用するとは限りません。常に最新の情報を収集し、新しい知識やノウハウを学び続ける意欲が重要です。
セミナーに参加したり、専門書を読んだり、信頼できる専門家からアドバイスを受けたりするなど、積極的に学ぶ姿勢を持ち、市場の変化に柔軟に対応していくことが成功への鍵となります。
冷静な判断力と迅速な意思決定を行う
不動産投資では、様々な局面で判断や意思決定が求められます。例えば、物件の購入、家賃設定、修繕の実施、入居者の選定、売却のタイミングなどです。
感情に流されたり、情報に惑わされたりせず、客観的なデータや分析に基づいて冷静に判断することが重要です。また、時には迅速な意思決定が求められることもあります。
チャンスを逃さず、リスクを最小限に抑えるためには、日頃から情報を整理し、自分なりの判断基準を持っておくことが大切です。
【まとめ】不動産投資で失敗しないためにプロに相談しよう!
不動産投資の失敗率は、公的なデータがないため一概には言えませんが、一定のリスクがあることは確かです。
しかし、失敗の原因の多くは情報不足や計画性の欠如に起因しており、適切な知識と準備、そして慎重な判断によって回避することが可能です。
本記事で紹介した失敗の原因と対策、そして成功のための心構えを参考に、堅実な不動産投資を目指してください。
