不動産投資の中でも、比較的少額から始められるワンルームマンション投資。
しかし、インターネット上では「ワンルームマンション投資はやめとけ」といったネガティブな意見も多く見受けられます。なぜ、そのように言われるのでしょうか。
本記事では、ワンルームマンション投資が「やめとけ」と言われる理由や具体的なリスク、そして、それらのリスクを理解した上で失敗を避けるためのポイントについて詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、ワンルームマンション投資に対する正しい知識を身につけ、ご自身にとって最適な判断ができるようになるでしょう。
もくじ
なぜ不動産投資でワンルームマンションは「やめとけ」と言われるのか?

ワンルームマンション投資に対して否定的な意見が出る背景には、いくつかの典型的な懸念点が存在します。
これらの懸念点が「やめとけ」という言葉に集約されているのです。具体的にどのような点が問題視されやすいのか、その理由を見ていきましょう。
収益性が低いという誤解と実態
ワンルームマンション投資は、他の不動産投資と比較して一室あたりの家賃収入が少ないため、「収益性が低い」というイメージを持たれがちです。
確かに、アパート一棟投資などと比べると、月々のキャッシュフローは小さくなる傾向にあります。
しかし、初期投資額も比較的少なく抑えられるため、投資効率を示す利回りで見た場合には、必ずしも他の投資対象に劣るわけではありません。
重要なのは、表面的な利回りだけでなく、諸経費や税金、空室リスクなどを考慮した実質利回りや、長期的な視点での資産価値を総合的に評価することです。
適切な物件を選び、堅実な運用計画を立てれば、安定した収益を期待することも可能です。
空室・家賃下落のリスク
ワンルームマンション投資において、最も直接的に収益に影響を与えるのが空室リスクと家賃下落リスクです。
単身者向けのワンルームマンションは、入居者の入れ替わりがファミリータイプに比べて早い傾向があり、その度に空室期間が発生する可能性があります。
また、周辺エリアに競合物件が増えたり、建物が古くなったりすることで、家賃を下げざるを得ない状況も考えられます。
これらのリスクを完全に避けることは難しいですが、入居者ニーズの高いエリアや物件を選ぶこと、適切な管理会社を選び入居者募集に力を入れること、長期的な修繕計画を立て物件の魅力を維持することなどで、リスクを低減することは可能です。
節税効果は限定的で長続きしない
不動産投資を始めると、購入初年度は不動産取得税や登録免許税などの諸費用が多くかかるため、不動産所得が赤字になることがあります。
この赤字を給与所得など他の所得と合算(損益通算)することで、所得税や住民税が還付される場合があります。これが、いわゆる不動産投資の節税効果です。
しかし、この節税効果は、経費として計上できる項目が年々減少していくことや、減価償却費が少なくなっていくことから、永続的に続くものではありません。
特にワンルームマンションの場合、建物価格に占める減価償却費の割合が低いケースもあり、節税効果を過度に期待するのは危険です。
節税はあくまで副次的な効果と捉え、主目的である家賃収入による安定した収益確保を目指すべきです。
悪質な業者やカモにされる危険性
残念ながら、不動産投資の世界には、知識の少ない投資家をターゲットにする悪質な業者も存在します。
特にワンルームマンション投資は、比較的取り組みやすいイメージがあるため、初心者が狙われるケースも少なくありません。
例えば、「絶対に儲かる」「サブリースだから安心」といった甘い言葉で、相場よりも高値で物件を売りつけたり、不利な契約を結ばせようとしたりする手口があります。
また、将来の収支シミュレーションを過剰に楽観的に提示し、リスクについて十分に説明しない業者もいます。
このような悪質な業者に騙されないためには、複数の業者から話を聞き、情報を比較検討すること、契約内容を細部まで確認すること、そして何よりも自身で不動産投資に関する知識を身につけることが重要です。
ワンルームマンション投資の具体的なリスク7選

ワンルームマンション投資には、魅力的な側面がある一方で、軽視できないリスクも存在します。「やめとけ」という意見の背景には、これらのリスクが現実化した際の深刻な影響があるのです。
ここでは、特に注意すべき7つのリスクを具体的に解説します。これらのリスクを事前に理解し、対策を講じることが、失敗を避けるための第一歩となります。
リスク1:空室による家賃収入の途絶
ワンルームマンションは一部屋のみの投資であるため、その一部屋が空室になると、その期間は家賃収入が完全に途絶えてしまいます。
アパート一棟投資であれば、複数戸のうち一部が空室でも他の部屋からの家賃収入でカバーできる場合がありますが、ワンルームではそれができません。
空室期間が長引けば、ローンの返済や管理費・修繕積立金などの支出は継続して発生するため、キャッシュフローが悪化し、自己資金の持ち出しが必要になることもあります。
このリスクを軽減するためには、入居者需要の高いエリア(例:駅近、都心部、大学や大企業の近くなど)の物件を選ぶこと、ターゲットとする入居者層(学生、単身社会人など)に合った設備や内装を維持すること、信頼できる管理会社に客付けを依頼することなどが有効です。
リスク2:物件価格の下落と売却損
不動産は株式などと同様に、市場の需給バランスや経済状況、金利の変動、さらには周辺環境の変化などによって価格が変動します。
購入時よりも物件価格が下落してしまうと、売却時に損失(売却損)が発生する可能性があります。
特に、新築ワンルームマンションは、購入した瞬間に中古物件となり、価格が下がりやすい傾向があると言われています。
これは、新築プレミアムと呼ばれる新築時の価格上乗せ分が剥落するためです。
対策としては、購入前に周辺の類似物件の取引事例や賃料相場を徹底的に調査し、将来的な値下がりリスクも考慮した上で、割高な物件に手を出さないことが重要です。
リスク3:家賃滞納と回収コスト
入居者が家賃を滞納するリスクも考慮しなければなりません。家賃が支払われなければ、当然ながら収入は得られません。
さらに、滞納された家賃を回収するためには、督促の手間や時間、場合によっては法的手続きにかかる費用が発生することもあります。
長期間にわたる滞納や、入居者との連絡が取れなくなるケースも稀に存在します。
対策としては、入居審査を厳格に行うこと、保証会社を利用することが挙げられます。
保証会社を利用すれば、万が一家賃滞納が発生した場合でも、保証会社が一定期間の家賃を立て替えてくれるため、収入の安定化に繋がります。
ただし、保証会社への委託料が発生することも念頭に置く必要があります。
リスク4:金利上昇によるローン返済額増加
多くの人が不動産投資ローンを利用してワンルームマンションを購入しますが、変動金利型のローンを選んだ場合、将来的に金利が上昇すると、毎月のローン返済額が増加するリスクがあります。
返済額が増加すれば、当然ながら手残りのキャッシュフローは減少し、場合によっては収支がマイナスになる可能性も否定できません。
対策としては、金利上昇リスクをあらかじめ収支シミュレーションに織り込んでおくこと、可能な範囲で自己資金の割合を増やし借入額を抑えること、固定金利型のローンを選択することも検討できます。
ただし、一般的に固定金利は変動金利よりも当初の金利が高めに設定される傾向があります。
リスク5:管理費・修繕積立金の値上がり
マンションを所有していると、毎月、管理費と修繕積立金を支払う必要があります。
管理費は日常的な清掃や管理人の人件費などに充てられ、修繕積立金は将来の大規模修繕(外壁塗装、屋上防水など)のために積み立てられるものです。
これらの費用は、マンションの管理組合の決定により、将来的に値上がりする可能性があります。特に、築年数が経過するにつれて修繕箇所が増え、修繕積立金が増額されるケースは珍しくありません。
これらの費用が想定以上に値上がりすると、収支計画に影響を与えます。
購入前に、マンションの長期修繕計画や管理費・修繕積立金の過去の改定履歴などを確認し、将来的な値上がり幅をある程度予測しておくことが望ましいです。
リスク6:サブリース契約の潜在的リスク
サブリース契約とは、不動産会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する仕組みです。
オーナーにとっては、空室の有無にかかわらず一定の家賃収入(保証賃料)が得られる、入居者管理の手間がかからないといったメリットがあります。しかし、「サブリースだから安心」と安易に考えるのは危険です。
サブリース契約には、保証賃料が将来的に減額されるリスクや、契約期間中に解約できない、あるいは解約時に違約金が発生するリスクなどが潜んでいます。
また、サブリース業者が倒産した場合、保証されていた家賃収入が得られなくなる可能性もあります。契約内容を細部まで確認し、メリットだけでなくデメリットやリスクも十分に理解した上で契約することが不可欠です。
リスク7:流動性が低く現金化しにくい
不動産は、株式や投資信託などの金融商品と比較して、一般的に流動性が低い(換金性が低い)資産です。売りたいと思ったときにすぐに希望通りの価格で売却できるとは限りません。
特に、地方の物件や個性の強い物件、あるいは経済状況が悪化した局面などでは、買い手が見つかりにくく、売却までに時間がかかったり、大幅な値下げを余儀なくされたりする可能性があります。
急に現金が必要になった場合に、すぐに不動産を売却して資金化することが難しいという点は、ワンルームマンション投資のデメリットの一つとして認識しておく必要があります。
売却しやすい物件を選ぶこと(例:駅からのアクセスが良い、人気のエリアにあるなど)も、このリスクを軽減する一助となります。
「やめとけ」の意見は本当?ワンルーム投資で失敗しないためのポイント
これまでワンルームマンション投資のネガティブな側面やリスクについて解説してきましたが、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることで、失敗の可能性を低減し、安定した資産形成を目指すことは十分に可能です。
ここでは、失敗しないためのポイントをご紹介します。
徹底した物件選び:立地と将来性を見極める
不動産投資の成否を大きく左右するのが物件選びです。「立地がすべて」と言われるほど、物件の所在地は重要な要素となります。
具体的には、最寄り駅からの距離、都心へのアクセス、周辺施設の充実度(スーパー、コンビニ、病院など)、治安の良さなどを総合的に評価する必要があります。
さらに、現状の利便性だけでなく、将来性を見極めることも大切です。例えば、近隣で再開発計画が進んでいるエリアや、人口増加が見込まれるエリアは、将来的な賃貸需要の維持や資産価値の上昇が期待できます。
逆に、人口減少が進むエリアや、競争が激化しそうなエリアの物件は慎重に検討する必要があります。
| チェックポイント | 具体的な視点 |
| 交通利便性 | 最寄り駅からの徒歩分数、主要駅へのアクセス時間、複数路線利用の可否 |
| 生活利便性 | スーパー、コンビニ、ドラッグストア、飲食店、病院、公園などの生活施設の充実度 |
| 周辺環境・治安 | 騒音、悪臭の有無、夜間の明るさ、犯罪発生率など |
| 将来性 | 再開発計画の有無、人口動態(増減傾向)、近隣の大学や企業の状況 |
| 入居者ターゲットとの適合性 | 単身者向けか、学生向けかなど、ターゲット層のニーズに合った立地・間取りか |
これらのポイントを参考に、ご自身の目で現地を確認し、複数の物件を比較検討することが、良い物件選びに繋がります。
信頼できる不動産会社・管理会社を選ぶ
不動産投資は、購入して終わりではありません。購入後の賃貸管理や、将来的な売却まで、長期にわたって不動産会社や管理会社と付き合っていくことになります。そのため、信頼できるパートナーを選ぶことが極めて重要です。
信頼できる不動産会社を見極めるポイントとしては、実績が豊富であること、メリットだけでなくリスクについてもきちんと説明してくれること、こちらの質問に対して誠実に答えてくれることなどが挙げられます。
口コミや評判を参考にするのも良いですが、最終的にはご自身の判断で、長期的に良好な関係を築ける相手を選ぶようにしましょう。
現実的な収支シミュレーションを行う
ワンルームマンション投資を始める前には、必ず詳細な収支シミュレーションを行いましょう。不動産会社が提示するシミュレーションを鵜呑みにするのではなく、ご自身でも計算してみることが重要です。
シミュレーションでは、家賃収入だけでなく、管理費、修繕積立金、固定資産税・都市計画税、火災保険料、ローン金利、賃貸管理手数料などの支出項目を漏れなく計上します。
さらに、空室期間や家賃下落の可能性、将来的な修繕費用の発生なども考慮に入れ、悲観的なシナリオも想定しておくべきです。
出口戦略(売却)を意識した購入
不動産投資は、購入時の入口だけでなく、売却時の出口戦略も重要です。いつ、いくらで、誰に売却するのかを、購入前からある程度想定しておくことが望ましいです。
特にワンルームマンションの場合、主な売却ターゲットは、同じように不動産投資を考えている個人投資家や、居住用に購入する単身者などが考えられます。
将来的に売却しやすい物件とは、やはり立地条件が良く、賃貸需要が安定しており、建物管理の状態も良好な物件です。購入時に「この物件なら将来売却しやすいだろうか」という視点を持つことで、より慎重な物件選びができます。
また、経済状況や不動産市場の動向を見ながら、最適な売却タイミングを見極めることも重要になります。
短期的な売買差益を狙うのではなく、長期的な家賃収入と、最終的な売却益をトータルで考える視点が求められます。
ワンルームマンション投資が向いている人・向いていない人の特徴
ワンルームマンション投資は、誰にでも向いている投資手法というわけではありません。ご自身の状況や性格、投資目的などによって、向き不向きがあります。
ここでは、ワンルームマンション投資が比較的向いている人の特徴と、あまり向いていない人の特徴を整理してみましょう。
向いている人の特徴
ワンルームマンション投資は、特定の方々にとって魅力的な選択肢となり得ます。
例えば、本業で安定した収入があり、短期的な利益よりも長期的な視点でじっくりと資産を増やしていきたいとお考えの方には適しています。
また、不動産投資への第一歩として、比較的少額の自己資金からスタートしたいという方にも、ワンルームマンションは始めやすいでしょう。
さらに、日々の管理業務に手間や時間をあまりかけられない方にもおすすめです。信頼できる管理会社に委託することで、安心して運用を進めることができます。
加えて、団体信用生命保険を活用し、万が一の際の保障として家族に資産を残したいと考える方や、インフレによる現金の価値低下リスクに備えたい方にとっても、ワンルームマンション投資は有効な手段の一つと言えます。
向いていない人の特徴
一方で、ワンルームマンション投資があまり適していない方もいらっしゃいます。
例えば、短期間で大きな売買差益を狙いたい方には、長期的な家賃収入を主眼とするこの投資は不向きかもしれません。また、空室や家賃下落といった不動産投資特有のリスクを全く許容できない方にもお勧めできません。
さらに、自己資金が極端に少ない方や、ローンを利用することに強い抵抗を感じる方にとっては、精神的な負担が大きくなる可能性があります。
不動産会社に全てを任せきりにし、ご自身で学ぶ姿勢がない場合も、思わぬ失敗を招くことがあるでしょう。
加えて、不動産はすぐに現金化しにくい資産ですので、近々まとまった資金が必要になる可能性がある方も、他の投資方法を検討された方が賢明です。
これらの特徴はあくまで一般的な傾向であり、最終的にはご自身の投資目的やライフプランと照らし合わせて慎重に判断することが大切です。
【まとめ】ワンルームマンション投資のリスクを把握し効果的に運用しよう
ワンルームマンション投資が「やめとけ」と言われる背景には、収益性の誤解、空室リスク、限定的な節税効果、悪質業者の存在などがあります。
しかし、これらのリスクを正確に理解し、徹底した物件選び、信頼できる会社の選定、現実的な収支計画、出口戦略といった対策を講じることで、失敗の可能性は十分に低減できます。
ご自身の状況や投資目的を照らし合わせ、慎重な判断をすることが、ワンルームマンション投資で成功するための鍵となるでしょう。
