厚生年金を増額するには? 働き方と受給開始年齢で増える金額を解説

厚生年金を増額するには?  働き方と受給開始年齢で増える金額を解説|株式会社イー・トラスト

ねんきん定期便の見込額を見て、老後の収入に不安を感じた方もいるのではないでしょうか。厚生年金は、60歳以降も加入して働くか、受給開始を遅らせることで増額が可能です。ただし、増え方は給与の水準や加入期間、受け取り始める年齢によって異なり、在職老齢年金による支給停止などの注意点もあります。
この記事では、年金額が決まる仕組みと平均額、50代までにできる行動、60代の働き方による増え方、繰下げ受給の損益分岐、2027年9月から始まる保険料上限の引き上げの影響、年金以外で老後資金を補う方法を、金額の目安とあわせて解説します。

この記事の要約

  • 厚生年金は平均年収と加入月数で決まり、平均は月約15.1万円
  • 60歳以降も加入して働くと、年収360万円なら1年で年約2万円増
  • 70歳まで繰り下げると42%増、損益分岐は81歳11カ月ごろ
  • 2027年9月から保険料上限が段階的に上がり、対象者は年金も増加
  • 年金で足りない分はiDeCo・NISA・家賃収入で補う選択肢がある

厚生年金の受給額が決まる仕組みと平均額

厚生年金の受給額は、現役時代の給与水準と加入期間の長さで決まります。計算の土台と平均額を知っておくと、自分の見込額を平均と比べやすくなるでしょう。

項目 内容
計算の土台 賞与込みの平均標準報酬額と加入月数
受給額の平均 月151,142円(基礎年金を含む・令和6年度末)
年金額の改定 毎年4月分から物価・賃金に応じて見直し
令和8年度の改定率 基礎年金は1.9%、報酬比例部分は2.0%の引き上げ

賞与込みの平均給与と加入月数で決まる

老齢厚生年金の報酬比例部分は、賞与を含む平均給与と加入月数をもとに計算します。2003年4月以降の加入期間では、「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」が基本の式です。平均標準報酬額とは、毎月の標準報酬月額と標準賞与額の合計を加入月数で割った額のことです。2003年3月以前の期間は賞与を含めず、7.125/1000の乗率で計算されます。給与が高いほど、加入期間が長いほど年金額は増えるため、増額を目指すならどちらかを伸ばす方法を考えることになります。

受給額の平均は月約15.1万円にとどまる

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、令和6年度末時点の受給状況が公表されています。厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給者の平均年金月額は、基礎年金を含めて151,142円です。国民年金だけを受け取る人の平均は月約5.5万円で、会社員として加入した期間の分が上乗せされていると考えられます。ただし、この平均には性別や加入期間が異なる人がまとめて含まれています。自分が受け取れる額は、ねんきん定期便で確認しましょう。

年金額は毎年4月分から物価と賃金で改定される

年金額は毎年度、物価や賃金の変動に応じて4月分から改定されます。令和8年度は令和7年度と比べて、基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%の引き上げとなりました。見込額は、改定によって将来変わる可能性も踏まえておくと安心でしょう。

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50代までの会社員が厚生年金で損しない3つの行動

60歳になるまでの期間は、将来の年金額の土台をつくる時間でもあります。見込額の把握、加入期間の維持、保険料を安易に削らないことの3点が、受給額に影響します。

行動 年金額への効果
ねんきんネットで試算する 働き方や受給開始年齢ごとの見込額がわかる
加入期間を途切れさせない 報酬比例部分の加入月数が減らない
保険料を無理に抑えない 平均標準報酬額が下がらない

ねんきんネットで働き方別の見込額を試算する

ねんきんネットを使えば、今後の働き方や受給開始年齢を変えた場合の年金見込額を試算できます。「かんたん試算」では、今の加入条件が60歳まで続くと仮定し、クリック操作だけで見込額が表示されます。「詳細な条件で試算」なら、60歳以降も働くケースや受給開始を遅らせるケースも設定可能です。50歳以上の方に届くねんきん定期便の見込額は、今の加入条件が60歳まで続く前提で計算されています(50歳未満の方の定期便は、これまでの加入実績に応じた額です)。どちらの場合も働き方や受給開始年齢の変化は反映されないため、増額策の効果は詳細な試算で比べると判断しやすくなるでしょう。

転職や独立で加入期間を途切れさせない

会社員として働く期間が途切れると、その間は厚生年金の加入月数が増えません。転職の合間に空白期間ができた場合や、フリーランスとして独立した場合は、国民年金の第1号被保険者に切り替わります。第1号被保険者の期間は基礎年金の対象になるものの、報酬比例部分は増えない点に注意が必要です。独立する場合も、法人を設立して役員報酬を受け取る形にすれば、原則として厚生年金への加入を続けられます。

保険料を抑える工夫で将来の年金を削らない

社会保険料を減らす工夫は、将来の厚生年金を減らすことにもつながりかねません。標準報酬月額は原則として4〜6月の報酬をもとに決まるため、この時期に残業を減らすと、保険料と一緒に年金額の計算のもとになる額も下がります。手取りを増やしたい場合も、将来の年金への影響を差し引いて考えると、判断を誤りにくくなるでしょう。

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60代の働き方で変わる年金の増え方

60代の働き方で変わる年金の増え方

60歳以降も会社員として働けば、70歳になるまで厚生年金の加入月数は積み上がります。労働政策研究・研修機構(JILPT)が2019年に実施した企業調査では、回答企業の57.9%に、60代前半の継続雇用者として嘱託・契約社員で働く人がいました(複数回答)。

働き方の論点 年金への影響
60歳以降も厚生年金に加入 70歳まで報酬比例部分が増える
65〜69歳で加入して働く 毎年10月分から年金額に反映
給与と年金の合計が月65万円を超える 超えた額の半分が支給停止

年収360万円なら1年働くごとに年約2万円増える

年収360万円で1年間厚生年金に加入すると、報酬比例部分は年約2万円増える計算です。平均標準報酬額30万円に5.481/1000と12カ月を掛けると、年19,731円になります。増えた分は生涯受け取れるため、65歳から20年受け取ると累計で約39万円の差が生じます。60歳から65歳まで5年間働けば、年約10万円が上乗せされる見込みです。標準報酬月額の等級や経過的加算を考慮しない概算のため、目安として活用するとよいでしょう。

65歳以降の加入分は毎年10月に年金へ反映される

65〜69歳の人が厚生年金に加入して働くと、前年9月から当年8月までの加入分が、毎年10月分の年金から反映されます。2022年4月に導入された在職定時改定と呼ばれる仕組みです。退職を待たずに年金額が毎年見直されるため、働きながら増額の効果を確認できます。

給与と年金の合計が基準を超えると年金が減る

働きながら受け取る老齢厚生年金は、給与と年金の月額の合計が65万円を超えると一部が支給停止になります。基準額は、2025年度の51万円から2026年4月に65万円へ引き上げられました。停止額は、基本月額と総報酬月額相当額の合計から65万円を引いた額の半分です。たとえば基本月額10万円、総報酬月額相当額60万円なら、超過分5万円の半分にあたる月2.5万円が支給停止となります。基本月額は加給年金額を除いた報酬比例部分の月額で、基礎年金は支給停止の対象外です。基準額は毎年度、賃金の変動に応じて改定される点も押さえておきましょう。

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繰下げ受給は何歳まで待つと得になる?

繰下げ受給で得をするかどうかは、何歳まで生きるかと、受給を待つ間の生活費をどうまかなうかで分かれます。70歳から受け取る場合、累計額が65歳開始を上回るのは81歳11カ月ごろです。健康状態や家計の見通しとあわせて判断しましょう。

受給開始年齢 65歳開始と比べた年金額
66歳 8.4%増
68歳 25.2%増
70歳 42%増
75歳 84%増

受給を1カ月遅らせるごとに0.7%増える

老齢年金の受給開始を66歳以降に遅らせると、1カ月ごとに年金額が0.7%増えます。70歳まで待てば42%、75歳まで待てば84%の増額となり(75歳までの繰下げは昭和27年4月2日以降生まれの場合)、増額率は一生変わりません。65歳時点で年180万円の人が70歳から受け取ると、年約255.6万円になる計算です。累計額で比べると、70歳から受け取る場合は81歳11カ月ごろに65歳から受け取る場合を上回ります。税や社会保険料を考慮しない単純計算のため、手取り額で見ると損益分岐はもう少し後にずれる可能性があります。老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に繰り下げられるので、片方だけを遅らせる方法も選択肢のひとつです。

繰下げても65歳以降の加入分と在職停止分は増えない

繰下げによる増額の対象は、65歳時点の年金額のうち本来受け取れた部分に限られます。在職老齢年金で支給停止になる分は増額されず、65歳以降に働いて増えた厚生年金にも増額率は上乗せされません。配偶者がいる場合の加給年金も増額の対象外で、繰下げ待機中は受け取ることもできません。65歳以降も高い給与で働き続ける人ほど、繰下げで得られる効果は小さくなる傾向にあります。

受給を待つ間の生活費を賄える範囲で繰り下げる

老齢厚生年金と老齢基礎年金をどちらも繰り下げる場合、待機中は年金収入がないため、給与や貯蓄で生活費を賄えることが前提になります。片方だけを繰り下げる場合も、もう一方の年金だけでは足りない分をどう補うかを考えておく必要があります。途中で待てなくなった場合は、その時点で請求すれば、それまでの月数に応じて増額された年金を受け取り始められます。待つ期間は、既にある貯蓄や退職金でどれだけ暮らせるかを試算したうえで決めると安心でしょう。

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厚生年金保険料の上限引き上げは損?得?

2027年9月から、厚生年金の標準報酬月額の上限が3段階で引き上げられます。対象となる会社員は保険料が増える一方、将来の年金も増えるため、損か得かは年金を受け取る期間の長さで変わります。

時期 標準報酬月額の上限
2027年8月まで 65万円
2027年9月から 68万円
2028年9月から 71万円
2029年9月から 75万円

2027年9月から月収66.5万円以上が対象になる

最初の引き上げで影響を受けるのは、報酬月額が66.5万円以上の会社員です。現在は報酬月額がいくら高くても、65万円の等級で保険料が頭打ちになります。2027年9月以降は65万円の等級の範囲が66.5万円未満までとなり、66.5万円以上の人は新設される68万円の等級に移る見込みです。

本人の保険料は最終的に月約9,100円増える

標準報酬月額が75万円以上の人は、2029年9月以降、本人が負担する保険料が月約9,100円増えます。保険料は会社と折半のため、会社も同じ額を負担します。社会保険料控除によって所得税と住民税が軽くなる分を考慮すると、手取りへの影響は月約6,100円になる見込みです。

上限額で10年加入すると年金が月約5千円増える

負担が増える分、将来の厚生年金も増えます。厚生労働省の試算では、引き上げ後の上限額で10年間加入すると、年金は月約5,100円増え、増額は生涯続くとされています。年金課税を考慮した増額は月約4,300円です。税引き後の負担増(月約6,100円)の10年分を税引き後の増額で割ると、約14年受け取れば負担分を取り戻せる計算になります。65歳から受け取る場合、79歳ごろより長生きすれば得になるのがひとつの目安です。一定の前提を置いた試算のため、実際の金額は異なる可能性があります。

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厚生年金の増額だけで老後資金は足りる?

厚生年金の増額だけで老後資金は足りる?

厚生年金を増やす方法には限りがあり、望む生活水準によっては年金だけで足りない家庭も少なくないでしょう。不足分の目安をつかんだうえで、税制優遇のある制度や家賃収入など、年金以外の収入源を組み合わせる方法を紹介します。

手段 主な特徴
iDeCo 掛金が全額所得控除、運用益も非課税
NISA 年間360万円・生涯1,800万円まで運用益が非課税
不動産の家賃収入 ローン完済後は家賃が老後の収入源になる

月20万円の受給には平均年収約710万円が必要

一人で月20万円の年金を受け取るには、40年間の平均年収で約710万円が目安です。令和8年度の老齢基礎年金の満額は月70,608円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)のため、残りの約12.9万円を報酬比例部分でまかなう必要があります。約12.9万円を年額に直し、5.481/1000と480カ月で割ると、平均標準報酬額は約59万円、年収にすると約708万円です。経過的加算などを含めない概算ですが、平均年収がこれを下回る場合は、年金以外の収入源を持つ前提で老後の家計を考えるとよいでしょう。

iDeCo・NISAの非課税運用で不足分を補う

iDeCoとNISAでは、運用で得た利益に税金がかかりません。iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となり、毎月1万円を拠出すると、所得税10%・住民税10%の人なら年2.4万円の税負担が軽くなります。NISAでは年間360万円、生涯で1,800万円までの投資の運用益が非課税で、保有期間にも制限がありません。どちらも元本は保証されておらず、運用の結果によっては資産が減るおそれもあります。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、生活費の余裕や使う時期に合わせて配分を決めましょう。

ローン完済後の家賃収入を年金に上乗せする

賃貸用の不動産では、ローンを返し終えると、管理費や税金などを差し引いた家賃が手元に残ります。現役のうちにローンを組んで購入し、退職前後に完済する計画を立てれば、年金に上乗せする収入源になり得ます。一方で、空室や修繕、金利の上昇といったリスクもあるため、立地や管理体制まで含めて検討しましょう。

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まとめ

厚生年金は、60歳以降も加入して働くか、受給開始を遅らせることで増額できます。年収360万円なら1年加入するごとに年約2万円、70歳まで繰り下げれば42%の増額が目安です。ただし、在職老齢年金で支給停止となる分や加給年金は繰下げても増えないため、自分の働き方や家族構成に合わせて判断しましょう。年金の見込額が生活費に届かない場合は、不足額を試算したうえで、年金以外の収入源を早めに準備しておくのがおすすめです。
ねんきん定期便の見込額を見て、繰下げや60代の働き方だけでは老後の生活費に届かないと感じた方もいるでしょう。退職まで時間がある40〜50代のうちに、ローン完済の時期から逆算して家賃収入を年金のプラスアルファ分として育てる方法もあります。
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