社会保険料が高いと感じる原因は、高齢化に伴う料率の引き上げと、給与に比例して天引き額が自動的に増える仕組みにあります。
本記事では、社会保険料の使い道や計算ルール、給与別の負担額シミュレーションを解説します。加えて、会社員ができる負担軽減策や手取りを増やす税金対策も紹介します。
この記事の要約
- 40歳に到達すると新たに介護保険料が上乗せされるため、その分だけ手取りが目減りする
- 社会保険料は毎年4月から6月までの平均給与をもとに向こう1年間の等級が決まる
- 健康保険と厚生年金の保険料は企業と従業員で半分ずつ支払うルールが適用される
- 選択制の企業型確定拠出年金なら給与の一部を掛金に振り替えて標準報酬月額を下げられる
- 不動産投資の赤字を給与所得と損益通算すれば所得税や住民税を圧縮できる
もくじ
なぜ「社会保険料は高すぎる」と感じるのか?
社会保険料の負担が重いと感じる背景には、国の財政事情や年齢による追加徴収といった構造的な要因が考えられます。給与から引かれる金額が増える理由を整理していきます
| 要因 | 具体的な理由 |
|---|---|
| 少子高齢化 | 高齢者医療などの社会保障給付費が増大し、料率が引き上げられているため |
| 自動的な負担増 | 給与やボーナスが上がるほど、天引きされる金額も比例して増えるため |
| 40歳以上の追加負担 | 40歳に到達すると、健康保険料に加えて介護保険料が上乗せされるため |
| 負担の不可視化 | 給与天引きのため税金のような自覚が薄く、ニュースでも話題になりにくいため |
少子高齢化で給付費が増え続けているから
社会保険料の負担が増している大きな理由の一つは、長期的に社会保障給付費が膨らんできた点です。国立社会保障・人口問題研究所の集計では、2023年度の社会保障給付費は135兆4,928億円と、1970年代以降おおむね右肩上がりに増えてきました。年金を受給する高齢者が増える一方で、保険料を納める現役世代は減少傾向にあります。厚生年金の保険料率も段階的に引き上げられ、平成29年9月の引き上げを最後に、現在は18.3%で固定されています。一人あたりの負担割合が高まり、家計への影響が大きくなりやすい状況と言えるでしょう。
昇給やボーナスで天引き額も増えるから
給与やボーナスが増えるほど社会保険料も高くなるため、手取りは思ったように増えない傾向にあります。日本の社会保険制度は、収入が多い人ほど負担額も大きくなる累進的な仕組みです。昇給しても天引きされる金額が相応に増えるため、労働の対価を実感しにくくなるケースもあるでしょう。
40歳から介護保険料が上乗せされるから
40歳を迎えると介護保険の第2号被保険者となり、新たに介護保険料の負担が始まります。健康保険・厚生年金・雇用保険に加えて項目が増えるため、給与明細を見て驚く人も少なくないでしょう。協会けんぽの介護保険料率は毎年度見直されており、令和7年度の1.59%から令和8年度は1.62%へ引き上げられました。年度によって上下するものの、40歳以降は健康保険料に加えてこの負担が続くため、働き盛りの世代ほど天引き額が大きくなりやすい状況でしょう。
税金と違って負担が見えにくいから
社会保険料は毎月の給与から自動的に天引きされるため、負担の大きさを自覚しにくい側面があります。所得税や消費税の増税はメディアで大きく報道される一方、社会保険料の引き上げは目立ちにくい形で進んできました。手取りが減った原因を確認する段階になって、初めて社会保険料の高さに気づくケースも少なくないでしょう。
そもそも給料から引かれる社会保険料は何に使われている?

社会保険料は単なる支出ではなく、人生のさまざまなリスクに備える保険として機能しています。各制度が担う役割を整理していきます。
| 保険の種類 | 主な役割と使い道 |
|---|---|
| 健康保険 | 病気やケガの医療費負担を原則3割に抑え、高額療養費なども支給する |
| 厚生年金保険 | 原則65歳から受け取る老齢年金や、障害・死亡時の生活保障に充てる |
| 介護保険 | 介護が必要になった高齢者へのサービス提供を社会全体で支える |
| 雇用保険 | 失業時の基本手当や、育児休業給付などの労働者の生活安定を支える |
健康保険:医療費の自己負担を軽くする
健康保険は、医療機関の窓口で支払う治療費や薬代の自己負担を原則3割に抑える制度です。手術や長期入院で医療費が高額になった場合は、上限を超えた分が払い戻される高額療養費制度を利用できます。病気やケガで4日以上仕事を休み、その間の給与を受けられなかったときは傷病手当金が支給されます。金額は給与の約3分の2相当で、支給開始日から通算1年6か月まで受け取れるため、収入が途絶えるリスクを和らげられるでしょう。
厚生年金:老後や万一の生活を保障する
給与から引かれる厚生年金保険料は、将来受け取る老齢厚生年金の原資です。納めた期間や金額に応じて将来の受給額が増えるため、老後の生活資金を確保する役割を担います。病気で障害が残った場合の障害年金や、生計を支える人が亡くなった際に家族へ支払われる遺族年金など、万が一の保障も含まれています。
介護保険:高齢者の介護を社会で支える
40歳以上が納める介護保険料は、要介護認定を受けた高齢者が少ない自己負担で介護サービスを利用するための財源です。訪問介護やデイサービス、特別養護老人ホームへの入居など、多様なケアを支えています。自身の将来への備えであると同時に、親の介護費用を社会全体で分担する相互扶助の機能も担っています。
雇用保険:失業や育休中の収入を補う
雇用保険は、会社を退職して次の仕事を探す間に基本手当(失業保険)を受け取れる制度です。生活費の不安を抱えずに再就職活動へ専念しやすい環境が整います。育児休業を取得した際にも育児休業給付金が支給されるため、子育てとキャリアの両立を金銭面から支える役割も担っています。
毎月の社会保険料はどうやって決まる?
社会保険料の計算には、毎年特定の時期の給与平均を用いるルールがあります。天引き額が決まる仕組みを解説していきます。
| 決定の仕組み | 計算のルール |
|---|---|
| 標準報酬月額の決定 | 毎年4月から6月に支払われた給与の平均額をもとに、向こう1年間の保険料等級が決まる |
| ボーナスへの課税 | 夏や冬に支給される賞与に対しても、所定の保険料率を掛けて計算される |
| 労使折半の原則 | 算出された健康保険料と厚生年金保険料は、企業と従業員が半分ずつ負担する |
4〜6月の平均給与で1年間の等級が決まる
毎月の社会保険料は、原則として毎年4月から6月に支給された給与の平均額を基に算出されます。平均額を一定の幅で区分した等級表(標準報酬月額)に当てはめて金額が決まり、その年の9月から翌年8月まで適用される仕組みです。4月から6月に残業代が多く支払われると、1年間にわたって社会保険料が高い水準のまま続くおそれがあります。
ボーナスにも所定の保険料率が掛かる
社会保険料は毎月の給与だけでなく、賞与の支給時にも天引きされます。計算に用いるのは、賞与額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額で、健康保険や厚生年金の保険料率を掛けた金額です。ボーナスはまとまった金額が支給されるため、一度に引かれる社会保険料も数万円から十数万円に達し、手取りが目減りしたと感じやすくなるでしょう。
企業と従業員で半分ずつ負担する労使折半
健康保険と厚生年金は、算出された保険料の全額を従業員が負担する仕組みではありません。企業と従業員が保険料を半分ずつ負担する「労使折半」が採用されています。給与明細に記載された金額と同額を、会社側も負担して国に納めています。
手取り額はいくら?給与別の社会保険料シミュレーション
収入に応じて社会保険料がどれくらい引かれるのか、具体的な金額を把握しておくと家計管理に役立つでしょう。40歳未満の会社員を想定した給与別の天引き目安を紹介していきます。
| 額面月収(目安) | 毎月の天引き額(40歳未満) |
|---|---|
| 月収20万円 | 約3万円 |
| 月収30万円 | 約4万4千円 |
| 月収40万円 | 約6万円 |
月収20万円の場合は約3万円が天引きされる
月収20万円の会社員では、健康保険・厚生年金・雇用保険を合わせた毎月の社会保険料負担が約3万円になります。所得税や住民税も差し引かれるため、実際の手取り額は16万円前後まで目減りする計算です。家賃や生活費を支払うと手元に残る余裕は少なく、日々の節約が求められやすい水準と言えるでしょう。
月収30万円の場合は約4万4千円が天引きされる
月収30万円になると、社会保険料の天引き額は約4万4千円になります。税金を引いた後の手取り額は24万円前後が目安です。20代後半から30代の平均的な給与帯にあたり、結婚や子育てなどのライフイベントが重なる時期でもあります。支出の増加に対して、手取りの少なさを実感しやすい段階と言えるでしょう。
月収40万円の場合は約6万円が天引きされる
月収が40万円に達すると、社会保険料は約6万円の負担になります。手取り額は31万円前後で、額面と手取りの差は年間100万円近くにまで広がります。収入が増えるほど累進的に負担も重くなるため、額面が上がった実感よりも天引き額の大きさが気になりやすくなるでしょう。
会社員が社会保険料の負担を少しでも減らす方法

社会保険料のルールを理解しておくと、法律の範囲内で天引き額を抑える対策も検討できます。会社員個人が取り組める現実的な方法を紹介していきます。
| 対策の内容 | 期待できる効果 |
|---|---|
| 4〜6月の残業抑制 | 秋からの1年間適用される標準報酬月額を低く抑え、保険料を減らす |
| 企業型DCの掛金増額 | 給与の一部を掛金に振り替えることで、算定基礎となる報酬を下げられる |
| 業務委託の副業 | 個人事業主として稼ぐ報酬は給与ではないため、社会保険料の算定対象から外れる |
| 扶養範囲内の労働 | パートやアルバイトの収入を年収106万円・130万円の壁未満に抑える |
4〜6月の残業を控えて等級を下げる
4月から6月までの3ヶ月間に残業を意識的に減らすと、その後1年間の社会保険料を抑えられる可能性があります。4月から6月の給与平均が標準報酬月額を決めるため、残業代で給与額を押し上げない工夫がポイントです。業務を効率化して定時退社を心がけ、等級が1つでも下がれば、秋以降の毎月の手取りを増やせる可能性があります。ただし標準報酬月額は将来受け取る老齢厚生年金の額や、傷病手当金・育児休業給付などの計算にも使われるため、下げれば保障も小さくなる点は押さえておきましょう。なお4月から6月の平均で著しく不当な等級になる場合は、年間平均による保険者決定の申し立てができる仕組みもあります。
企業型DCの掛金で標準報酬月額を下げる
勤務先が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している場合でも、従業員が自分で上乗せする「マッチング拠出」の掛金は、給与から控除されるものの所得控除(小規模企業共済等掛金控除)として扱われるため、標準報酬月額は下がらず社会保険料も変わりません。社会保険料の算定対象から外れるのは、給与の一部を掛金に振り替える「選択制」の企業型DCを勤務先が導入している場合です。自社の制度がどちらの仕組みかを確認したうえで検討するとよいでしょう。
業務委託の副業で算定対象外の収入を増やす
勤務先以外の収入源をつくる際は、アルバイトではなく業務委託契約の副業を選ぶのがおすすめです。個人事業主として得る報酬は、事業主から労働の対価として支払われる給与ではないため、標準報酬月額の算定対象には含まれません。一方でアルバイトなど雇用契約の副業は、勤務時間や賃金の条件を満たすと副業先でも社会保険の加入対象となり、2か所の報酬を合算して保険料が決まる点に注意しましょう。本業の社会保険料を増やさずに、世帯全体の手取り収入を伸ばしやすくなります。
パートは106万・130万の壁を超えない
配偶者の扶養に入って働く場合は、年収が一定の基準を超えないようシフトを調整するとよいでしょう。現在は、従業員51人以上の職場で週20時間以上働き、賃金が月額8.8万円(年収換算で約106万円)以上になると、自身の勤務先で社会保険への加入対象となります。ただしこの賃金要件は令和8年10月に撤廃される予定で、企業規模の要件も段階的に引き下げられるため、「106万円の壁」を前提にした働き方は今後見直しが必要です。年収が130万円以上見込まれる場合は原則として扶養から外れます(19歳以上23歳未満の方は150万円未満が要件)。
会社員の実質的な手取りを最大化する4つの税金対策
社会保険料の削減には限界があるため、税金対策を並行して進めることが手取りを増やす鍵になるでしょう。会社員でも実践しやすい方法を整理していきます。
| 税金対策 | 実質的な手取りへの効果 |
|---|---|
| ふるさと納税 | 寄付額に応じて翌年の住民税が控除され、返礼品によって生活費が浮く |
| iDeCo | 掛金が全額所得控除となり、所得税や住民税の負担を軽減できる |
| 新NISA | 株式や投資信託で得た運用益が非課税になり、効率よく資産を増やせる |
| 不動産投資 | 給与所得と不動産所得の赤字を損益通算し、所得税や住民税を圧縮する |
ふるさと納税で生活費の負担を和らげる
ふるさと納税は、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から原則全額控除される制度です。控除される金額には所得に応じた上限があるため、上限を超えた分は自己負担になります。また確定申告をせずワンストップ特例を使う場合は、所得税からの還付は行われず、翌年度の住民税の減額のみとなる点も押さえておきましょう。日用品や食品を返礼品で賄えば生活費の支出を抑えられ、間接的に家計の余裕につながるはずです。
iDeCoの所得控除で老後資金も作る
IDeCoを利用すると、積み立てた掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となり、その年の所得税と翌年の住民税の負担を抑えられます。ただし所得控除は所得税・住民税に効くもので、社会保険料そのものが減るわけではありません。運用益も非課税となるため、税負担を軽くしながら老後資金を準備する手段として位置づけるとよいでしょう。なお原則60歳になるまで引き出せない点には注意が必要です。
新NISAで運用益を非課税にして増やす
2024年から始まったNISAを利用すれば、投資信託や株式の運用で得た利益が非課税になります。通常は運用益に対して20.315%の税金がかかるため、その分だけ資産を効率よく増やしやすくなります。給与の手取りが増えにくい環境では、投資による資産の成長が家計を支える選択肢の一つとなるでしょう。
不動産投資の損益通算で所得税を圧縮する
不動産投資で発生した減価償却費などの帳簿上の赤字を給与所得から差し引くと、課税所得を引き下げられる場合があります。赤字と黒字を相殺する「損益通算」を確定申告で行うことで、源泉徴収された所得税の還付を受けられます。ただし赤字のうち、土地を取得するために借り入れた負債の利子に相当する部分は損益通算の対象外となるため、赤字の全額が差し引けるわけではない点に注意する必要があります。高年収の会社員ほど高い税率が適用されるため、不動産投資による節税効果も大きくなりやすいでしょう。
まとめ
社会保険料は4〜6月の給与平均を基に決まり、少子高齢化の影響から年々負担が重くなる傾向にあります。ボーナスからも天引きされ、40歳になれば介護保険料も加算されるため、手取りが伸び悩みやすい構造です。給与天引きの額を大きく減らすのは現実的に難しく、将来の資金不安を和らげるには、自ら実質的な手取りや資産を増やす行動が求められます。ふるさと納税やiDeCoといった制度を活用しながら、投資による対策にも取り組むことが、資産形成の鍵になるでしょう。
株式会社イー・トラストでは、会社員の節税や将来の資産形成に役立つ不動産投資をサポートしています。マンション経営を通じた手取りの最大化に関心がある方は、無料の個別面談やオンラインセミナーを活用して情報収集を始めてみてください。
