日本の不動産は今後、需要が期待できる地域とそれ以外で二極化が加速すると言われています。不動産投資を検討している方は、物件の価値が将来どちらの方向に進んでいくのか、注視していくことが重要です。
この記事では、日本の不動産の将来性を見極めるために必要な、経済状況やこれまでの不動産価格の推移について解説します。
日本の不動産価格と経済
経済状況の変化は、不動産価格に大きく影響を与える要素のひとつです。経済状況の変化を予測することが、今後の不動産価格の動向を見極めることにもつながります。
不動産価格の推移と経済状況についてみていきましょう。
不動産価格の推移
国土交通省が2022年11月30日に発表したプレスリリースに、住宅の「不動産価格指数」が掲載されています。[注1]
推移を確認すると、2013年から2022年まで不動産価格はゆるやかに上昇しています。これは、2013年に当時の首相が表明した、インフレ誘導をするという経済政策の影響です。とりわけ新築マンションにおいては、2010年と比べて最大で1.9倍近くにまで高騰しました。
戸建てや住宅用地に関しては、2019年から2020年にかけてやや下落しましたが、徐々に上昇の兆しをみせています。
不動産価格に影響を与える経済状況
近年の経済状況は、世界的にインフレ傾向です。輸入材料価格やエネルギー価格の上昇といったコスト上昇が招く、コストプッシュ型のインフレとなっています。
本来、インフレによる物価の上昇とともに所得もあがるため、生活にそれほど影響はありません。しかし、長年デフレ傾向から脱却できていなかった日本では、物価だけが上昇して給料はあがらない、いわゆるスタグフレーションをおこす経済状況となりました。
今後の日本の不動産価格を予想
今後の日本の経済動向は、日銀が金融緩和政策をどこまで維持するかが焦点となります。世界的なインフレのなか、回復したインバウンドの影響もあり、東京都心部では不動産価格が高止まり傾向で、今後もさらなる上昇が見込まれます。また、2025年に万博の開催が予定されている大阪でも、商業施設やホテルなどの不動産需要が高まり、不動産価格が上昇するとの予想です。
一方、地方都市では、福岡など一部の地域を除いて不動産価格は下落傾向です。人口減少に伴い、不動産の供給過多によるストック住宅や、空き家問題が深刻化すると懸念されています。
3つの視点から考察する日本の不動産の将来性
不動産価格は、1つの要因だけで上下するわけではありません。さまざまな要因が複雑に絡み合って相場が動くため、確実な予測は困難です。
そこで、大きく影響する可能性のある3つのキーワードに絞って、日本の不動産の将来性を予測します。
しばらくは低金利が続く見込み
不動産価格は金利の動向に大きく影響します。たとえば海外の場合、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利引き上げに従って、ユーロ圏を含むどの国も不動産価格を上げているのが現状です。
一方日本では、2022年に日銀が長期金利の変動幅の変更を発表しましたが、その数値は現行の0.25%から0.5%へ拡大した程度でした。
今後もしばらくは低金利政策が続くとみられており、金利上昇による不動産価格の大幅な上昇はない見込みです。
資材の高騰が与える不動産価格への影響
建材を輸入に頼る日本では、海外のインフレの影響を受けやすくなります。資材価格が高騰することで、建物の価格が上昇する可能性は否定できません。一方、国内で調達できる資材や人件費はほとんど変わらないほか、中古物件には大きな影響がないため、資材高騰理由による不動産価格全体の上昇は限定的との見解もあります。
おもに影響を受けるのは新築物件となり、不動産価格の極端な上昇はないまでも、資材高騰が続く限り価格が今後安くなることはないでしょう。
海外投資家の増加
2023年5月現在、円安の傾向は大きく変わらないことから、海外投資家の増加による不動産価格の上昇が予想されています。また、海外投資家の増加は円相場だけが理由ではありません。
たとえば、日本から近い台湾では、中国との有事を危惧した資産防衛として都心部にあるマンションを購入したケースもあります。さらに、日本の不動産を取得すると、投資家ビザを取得できる点も海外投資家にとって大きなメリットです。今後も海外投資家による不動産需要増が見込まれるため、エリアによっては価格が上昇する可能性もあります。
海外からみる日本の不動産の魅力
海外の投資家にとって、日本での不動産投資は魅力的です。特に規制が少ない点は、海外投資家の増加につながっています。
価格、利回り、参入ハードルという視点で、海外からみた日本の不動産投資の魅力についてみていきましょう。
価格の安さ
日本の不動産は、海外に比べて低価格な点が魅力の1つです。日本不動産研究所が2022年10月現在として発表した、「国際不動産価格賃料指数」[注2]によると、日本の不動産価格は国際的にみてかなり低い水準となっています。
たとえば、東京都港区のマンション価格指数を100とした場合、台北では161、ロンドンでは186.1、そして香港では248.9です。ほかの海外主要都市と比較しても、おおむね日本の価格指数は低くなっています。
価格が低くて取得しやすい日本の不動産は、海外投資家にとって魅力的な投資先といえるでしょう。
利回りの高さ
日本の不動産は、高い利回りで運営できます。これは、海外よりも購入価格が低い一方、高い賃料を回収できるためです。1,000万円程度の物件でも、4〜6%の利回りが期待できます。
同じく日本不動産研究所の「国際不動産価格賃料指数」[注2]によると、不動産価格水準に比べて、日本の賃料水準は国際的にみて高いことが特徴です。特に上海、北京、台北に関しては、不動産価格が日本より高いにもかかわらず、賃料水準は日本のほうが高くなっています。
つまり、日本の不動産は海外からみると、安く購入できて高く貸し出せる効率のいい投資先ということです。
ハードルの低さ
海外投資家が日本の不動産を購入する際でも、特に規制や追加の課税はありません。外国人による土地の所有ができない中国や、購入が禁止されているシンガポールなどと違い、不動産購入におけるハードルが低い点も日本の不動産の魅力です。
ただし、近年では一部の地域で、中国人による土地の取得が問題となっています。今後は、外国人による不動産取得に関する法のあり方が変わってくるかもしれません。
【まとめ】今後の日本の不動産投資は「需要」がキーワード
今後の日本の不動産は、「需要」が見込まれる地域とそれ以外で二極化する可能性があります。特に、不動産価格に大きく影響する要素が、外国人による不動産取得です。海外投資家から人気の高い地域では、需要増による価格の上昇がみられ始めています。
不動産投資をする際は、目先の価格だけではなく将来性も十分に織り込んだ事業シミュレーションをおこなうことが大切です。国内の経済状況はもちろん、世界経済の動向や海外投資家による不動産取得まで見越して、多角的に検討しましょう。