【2026年更新】不動産投資の損益分岐点(BER)とは? 運用・売却の計算式と赤字回避の対策を解説

【2026年更新】不動産投資の損益分岐点(BER)とは? 運用・売却の計算式と赤字回避の対策を解説|株式会社イー・トラスト

不動産投資を検討している方、あるいはすでに物件を運用中で「このまま続けて赤字にならないだろうか」と不安を感じている方に向けた記事です。物件が本当に利益を生むのかを客観的に判断するために求められるのが「損益分岐点(BER)」という指標です。
本記事では、不動産投資における「運用時」と「売却時」という2つの損益分岐点の違いから、専門知識がなくても自分で計算できる具体的な計算式とシミュレーション、そして赤字を回避し利益を出しやすくするための対策までを網羅的に解説します。

損益分岐点(BER)とは?

損益分岐点は英語で「Break-Even Ratio」といい、その頭文字を取って「BER」と略されます。
もともとは企業経営の分野で用いられてきた指標ですが、近年は不動産投資の収益シミュレーションにおいても重要な考え方として浸透しています。不動産投資では、家賃収入や各種経費、ローン返済額など、多くの数字が複雑に絡み合うのが特徴です。感覚や希望的観測だけで採算ラインを見極めるのは難しく、購入後に「思ったより手残りが少ない」と気づくケースも少なくないでしょう。BERを用いれば、どの水準まで収支が悪化しても赤字を回避できるのかを、一つの数値として把握できます。物件購入時の判断材料としてはもちろん、運用中の収支改善やリスク管理の指針としても活用できる、不動産投資の基礎となる指標と言えるでしょう。

不動産投資における2つの損益分岐点

不動産投資における2つの損益分岐点

不動産投資で利益を出すためには、2つの異なる損益分岐点を理解することが求められます。不動産投資においては、運用している期間の収支と、物件を手放すときの収支の2つの視点を持ちましょう。

損益分岐点の種類 該当する時期 収入として計算するもの 支出として計算するもの
運用時の損益分岐点 物件を所有し賃貸に出している期間 家賃収入、共益費、礼金など ローン返済額、管理費、修繕費、税金など
売却時の損益分岐点 物件を売却して手放す時点 売却価格、運用期間中の家賃収入の合計 物件購入費用、運用期間中の経費合計、売却費用など

運用時は家賃収入と支出が釣り合う点を指す

運用時の損益分岐点とは、毎月の家賃収入と、物件を維持するためにかかる支出が同額になる状態を指します。
分岐点を上回っていれば、手元に利益が残る黒字経営となります。逆に下回ると、手出しの資金が必要になる赤字状態に陥りかねません。不動産投資における支出には、金融機関へのローン返済額のほか、管理会社へ支払う管理委託費や共用部の光熱費などがあります。固定資産税などの税金や、退去ごとの原状回復費用も考慮しておきたい項目です。全ての支出を毎月の家賃収入でまかなえるかどうかが、運用時の損益分岐点を知る大きな目的の一つとなります。

売却時は総収支がゼロになる売却価格を指す

売却時の損益分岐点とは、投資を終える際に出口戦略として計算するトータル収支の基準です。
物件を手放すときに、これまでの家賃収入と売却価格の合計が、投資にかかった総支出と同額になる売却価格を指します。基準を上回る価格で売却できれば、投資全体として利益が生まれます。不動産投資は、毎月の家賃収入だけでなく、最終的に物件をいくらで売却できたかによって成否が左右されます。購入時から売却時の損益分岐点を意識して計画を立てることが求められるでしょう。トータルの支出には、購入時の頭金や諸費用、運用期間中の全ての経費、売却時にかかる仲介手数料なども含まれます。

運用時の損益分岐点となる入居率の計算方法

運用時の損益分岐点を把握するためには、必要な入居率を計算する必要があります。満室時の家賃収入に対して、どれだけの入居が確保できていれば赤字にならないかを知れます。ここでは、計算式と具体的なシミュレーションを紹介します。

計算に必要な項目 項目の内容 具体例
満室時の年間家賃収入 すべての部屋が埋まった場合に得られる1年間の家賃の合計額 月額10万円の部屋が10室なら年間1200万円
年間のランニングコスト 管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料などの1年間の合計額 年間200万円
年間のローン返済額 金融機関に支払う元金と利息の1年間の合計額 年間600万円
損益分岐点となる入居率 支出をまかなうために最低限必要な入居率の割合 上記の例では約66.6%

経費と返済額の合計を家賃収入で割って算出する

運用時の損益分岐点となる入居率を求める基本の計算式は、年間の支出合計を満室時の年間家賃収入で割る計算式です。具体的には、年間のランニングコストと年間のローン返済額を足し合わせた数字を、満室時の年間家賃収入で割ります。導き出されたパーセンテージが、赤字にならないための最低限の入居率とされます。

損益分岐点となる入居率(%)=(年間ランニングコスト + 年間ローン返済額)÷ 満室時の年間家賃収入 × 100

たとえば、計算結果が「80%」だった場合、常に8割以上の部屋が埋まっていなければ利益が出ないことになります。数値が高ければ高いほど、少しの空室が発生しただけで赤字に転落するリスクが高いということです。物件を購入する前や運用を見直す際には、できるだけ入居率を計算しておきましょう。

家賃収入と経費から必要な入居率を試算する

それでは、具体的な数字を当てはめて入居率のシミュレーションを行ってみましょう。満室時の年間家賃収入が1,000万円で、年間のランニングコストが150万円、年間のローン返済額が550万円の物件を想定します。この場合、年間の支出合計はランニングコストとローン返済額を合わせた700万円となります。

【シミュレーション例】
・満室時の年間家賃収入:1,000万円
・年間ランニングコスト:150万円
・年間ローン返済額:550万円
・年間の支出合計:150万円 + 550万円 = 700万円
損益分岐点となる入居率 = 700万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 70%

支出合計の700万円を満室時の家賃収入1,000万円で割ると、答えは0.7です。つまり、この物件における運用時の損益分岐点となる入居率は70%と言えます。もし全部で10室のアパートであれば、常に7室以上が入居していれば黒字になり、6室以下になれば赤字になると分かります。

売却時の損益分岐点となる価格の計算方法

次に、投資の最終的な成果を決める売却時の損益分岐点について解説します。
売却時の損益分岐点を把握することで、物件をいくらで売ればトータルで損をしないのかが明確になるでしょう。計算に必要な要素とシミュレーション方法を見ていきます。

売却時の損益分岐点に関わる項目 算定の基準となる内容
運用期間中の家賃収入の合計 物件を購入してから売却するまでに実際に得られた家賃収入の総額
購入時と売却時の諸費用 登記費用、不動産取得税、仲介手数料などの合計
運用期間中の経費とローン返済額 これまで支払ってきたランニングコストとローン返済額の総額
ローン残債 物件を売却する時点で金融機関に残っているローンの借入残高

総支出から家賃収入を引いて必要価格を算出する

売却時の損益分岐点となる価格は、不動産投資にかかったすべての支出から、これまで得られた家賃収入を引くことで求められます。
まず、購入時の頭金や諸費用、運用中のランニングコストとローン返済額、そしてローン残債などの総支出額を算出します。
そこから、これまでに受け取った家賃収入の合計を差し引いた金額が、損益分岐点となる売却価格です。

損益分岐点となる売却価格 = 総支出額 - 運用期間中の家賃収入合計
※総支出額 = 購入時の諸費用 + 運用期間中のランニングコスト + 運用期間中のローン返済額 + 売却時点のローン残債 + 売却時の諸費用

この計算式で求められた金額よりも高い価格で物件を売却できれば、手元に利益が残ることになります。
運用期間が長くなるほど家賃収入の合計額が増えるため、一般的には売却時の損益分岐点となる価格は少しずつ下がっていく傾向にあります。

10年運用後に売却するケースを試算する

具体的な数字を用いて、10年間運用したあとに物件を売却するケースをシミュレーションしてみましょう。
物件価格が4,000万円、購入時の諸費用が300万円、10年間の家賃収入合計が1,500万円と仮定します。また、10年間のランニングコストとローン返済額の合計が1,200万円、10年経過時点でのローン残債が2,500万円だったとします。

【シミュレーション例】
・購入時の諸費用:300万円
・10年間のランニングコスト+ローン返済額:1,200万円
・10年経過時点のローン残債:2,500万円
・10年間の家賃収入合計:1,500万円
総支出額 = 300万円 + 1,200万円 + 2,500万円 = 4,000万円
損益分岐点となる売却価格 = 4,000万円 - 1,500万円 = 2,500万円

この場合、総支出額は購入時の諸費用300万円、経費と返済額の合計1,200万円、ローン残債2,500万円を合わせた4,000万円です。
そこから10年間の家賃収入合計1,500万円を差し引くと、2,500万円という数字が導き出されます。したがって、10年後に2,500万円以上の価格で物件を売却できれば、投資全体として利益が出ることが分かります。

損益分岐点を下げて利益を出しやすくする対策

損益分岐点を下げて利益を出しやすくする対策

不動産投資で安定した利益を出すためには、損益分岐点をいかに下げるかが鍵となります。
損益分岐点が低ければ低いほど、少しの空室やトラブルがあっても黒字を維持しやすくなるでしょう。ここでは、損益分岐点を下げるための具体的な対策を紹介します。

対策 期待できる効果 実行する際のポイント
入居率の維持と空室対策 家賃収入が安定し収入の減少を防ぐ 退去前の募集開始や魅力的な設備への投資を検討する
ローン返済条件の見直し 毎月の支出額が減り資金繰りに余裕ができる 繰り上げ返済やより金利の低い金融機関への借り換えを行う
固定費や経費の削減 ランニングコストが減り利益率が向上する 管理委託費や火災保険料などの契約内容を定期的に見直す

空室期間を最小限に抑えて高い入居率を維持する

損益分岐点をクリアするうえで、収入源である家賃を確保し続けることが重要な要素の一つです。
空室が発生すると家賃収入が途絶え、短期間で収支が悪化する原因となり得ます。退去の連絡があった場合は速やかに次の入居者募集を開始し、空室期間を最小限に抑える努力が求められます。周辺の競合物件と差別化を図るために、入居者のニーズに合った設備を導入するのもおすすめです。インターネットの無料化や宅配ボックスの設置など、人気の設備を整えることで入居率の向上が期待できます。管理会社と密に連携を取りながら、空室が出にくい魅力的な物件づくりを進めていきましょう。

繰り上げ返済や借り換えでローンの返済負担を軽減する

支出の大部分を占めるローン返済額を減らすことは、損益分岐点を下げるうえで効果的な手段の一つです。
手元に資金の余裕がある場合は、繰り上げ返済を行って元金を減らす方法を検討しましょう。元金が減ることで利息負担が軽くなり、毎月の返済額を抑えられるようになります。現在契約している金融機関よりも金利が低い銀行へ借り換えを行うのも一つの方法です。金利が少し下がるだけでも、長期間にわたる返済では総支払額に差が生まれます。ただし、借り換えには手数料などの諸費用がかかるため、トータルで得になるかを事前にシミュレーションしてから判断するのがおすすめです。

管理委託費や火災保険料などの固定費を定期的に見直す

毎月継続的に発生する固定費を削減できれば、損益分岐点を下げられます。
とくに、物件の管理を委託している会社への管理手数料は、長期的に見ると大きな金額になります。管理手数料の相場は家賃の数%と言われていますが、サービス内容と金額が見合っているかを定期的に確認しましょう。火災保険料などの保険料も見直しの対象です。不要な補償がついていないかを確認し、複数の保険会社から見積もりを取って比較検討するのがおすすめです。一つひとつの削減額は小さくても、積み重なることで大きな経費削減に繋がると考えられるため、こまめな見直しを行っていきましょう。

耐久性の高い設備を導入して突発的な修繕費を抑える

運用期間中には、給湯器やエアコンなどの設備が故障し、突発的な修繕費が発生する場合があります。
予期せぬ大きな出費は、その月の収支を赤字に転落させる要因となりかねません。防ぐためには、あらかじめ耐久性が高く故障しにくい設備を選んで導入するのがおすすめです。初期費用が少し高くなったとしても、長持ちする設備であれば結果的にトータルの修繕費を抑えられます。定期的なメンテナンスを欠かさずに行い、設備の寿命を延ばす工夫も求められます。建物の外壁や屋根なども計画的に修繕を行い、予期せぬトラブルを未然に防ぐことで、安定した収支を実現しましょう。

損益分岐点から考える利益が出やすい物件の条件

損益分岐点を低く抑えやすい物件には、いくつか共通する特徴があると言われます。投資の成功確率を高めるために、利益が出やすい物件の条件について詳しく見ていきましょう。

利益が出やすい物件の条件 選ぶべき理由 確認すべきポイント
立地が良く資産価値が底堅い 入居者が絶えず家賃下落のリスクが低いため 駅からの距離、周辺の商業施設、人口の推移など
自然災害のリスクが低い 突発的な修繕費用の発生を抑えられるため 各自治体が発行しているハザードマップの確認
将来的な価値上昇が見込める 売却時の価格が高くなり利益が出やすいため 再開発の予定や新駅開業などの都市計画情報

賃貸需要が途絶えず資産価値が底堅い好立地の物件を選ぶ

不動産投資において、立地の良さは利益を出すうえで大きなアドバンテージの一つとなります。
駅から近い物件や、周辺にスーパーやコンビニなどの商業施設が充実している物件は、恒常的に高い賃貸需要があるとされます。入居希望者が多ければ空室期間が短くなり、家賃を下げることなく高い入居率を維持できるでしょう。好立地の物件は資産価値が下がりにくく、売却時にも有利な価格で手放せる可能性が高まります。長期間にわたって人口が減少しにくいエリアを選ぶことで、将来的なリスクの軽減にもつながります。地域の人口推移や賃貸需要の動向をリサーチし、底堅い需要が見込めるエリアで物件を探すことを心がけましょう。

突発的な出費が発生しにくい自然災害リスクの低いエリアを選ぶ

自然災害の発生も少なくない近年では、不動産投資においても災害リスクの管理が問われています。
水害や地震などの被害に遭うと、建物の修繕に多額の費用がかかるだけでなく、長期間にわたって空室が続くおそれもあります。できる限り自然災害のリスクが低いエリアで物件を選ぶことが、損益分岐点を跳ね上げないための防衛策となるでしょう。物件を購入する前には、各自治体が公表しているハザードマップを確認するようにしましょう。浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っていないかをチェックし、安全性の高い場所を選ぶことが求められます。建物の耐震基準が新しい基準を満たしているかどうかも、災害に強い物件を見極めるための重要なポイントとなります。

再開発や企業誘致などで将来的な価値上昇が見込めるエリアを選ぶ

現在はそれほど地価が高くなくても、将来的に価値が上がるエリアを見つけられれば大きな利益に繋がります。
たとえば、大規模な商業施設の建設や新駅の開業など、再開発の予定があるエリアは狙い目です。街の利便性が向上することで人口が流入し、賃貸需要が高まる傾向にあります。大きな企業が新しい工場やオフィスを誘致するエリアも、従業員の住居需要が高まりやすいためおすすめです。地価が上昇すれば家賃を高く設定しやすくなり、運用時の収支改善につながるでしょう。売却時の物件価格も上昇するため、トータルでの利益を伸ばせる可能性を秘めています。

損益分岐点を不動産投資に活用する際の注意点

損益分岐点を不動産投資に活用する際の注意点

損益分岐点は投資の道しるべとなる便利な指標ですが、活用する際には気をつけておきたい点があります。
数字だけにとらわれて誤った判断をしてしまわないよう、長期的な視点を持ちましょう。ここでは、損益分岐点を活用する際の注意点について解説します。

注意点 陥りやすい失敗例 意識すべき考え方
中長期的な視点で収支を判断する 一時的な赤字に焦って物件を安値で手放してしまう 数年間という長いスパンでトータルの収支を見極める
出口戦略を立てておく 運用中の利益だけで満足し売却時に大きな損を出してしまう 購入の段階からいつ、いくらで売却するかを計画する

一時的な出費に惑わされず中長期的な視点で収支を判断する

不動産投資を長く続けていると、入居者が退去したタイミングなどで一時的に収支が赤字になる月が発生することも珍しくないでしょう。
エアコンが壊れて交換費用がかかるなど、予期せぬ出費が重なることもあるはずです。しかし、単月の赤字だけで投資が失敗したと判断し、慌てて物件を手放すような対応は避けましょう。不動産投資は、一時的な収支のブレを吸収しながら、数年間という中長期的なスパンで利益を出していくビジネスモデルです。ある年に修繕費が多くかかったとしても、翌年は満室が続いて大きな黒字になる可能性も十分にあります。短期的な損益分岐点の上下に一喜一憂せず、長期的な視野を持って冷静に経営状況を分析するよう心がけましょう。

物件購入の段階から売却時を見据えた出口戦略を立てておく

運用中の毎月の収支が黒字であったとしても、最終的に物件を売却した際に損をしては意味がありません。
売却時の価格が想定よりも下がると、それまでの利益が失われるおそれもあります。物件を購入する段階から、いつ頃にいくらで売却するのかという出口戦略を綿密に立てておくことが求められます。何年後にローン残債がいくら減っているかを計算し、その時点でどのくらいの価格で売れれば利益が出るのかを把握しておきましょう。市況の変化に合わせて売却のタイミングを柔軟に見極めることも、不動産投資を成功させるための重要なスキルの一つです。常に売却時の損益分岐点を意識しながら、利益を確定させる最適なゴールを目指して運用を続けていきましょう。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • 運用時の損益分岐点は、家賃収入とローン返済を含む経費の支出が同額になる入居率を基準に判断する
  • 売却時の損益分岐点は、総支出額から運用期間中の家賃収入の合計を差し引いた価格を基準に判断する
  • 空室期間の短縮やローン条件の見直し、固定費の削減などを定期的に行い損益分岐点を下げる努力が必要になる
  • 利益を出すためには、好立地で災害リスクが低く、将来的な価値上昇が見込めるエリアで物件を選ぶことが大切になる

一時的な出費に焦ることなく中長期的な視点を持ち、物件購入時から出口戦略を描いておくことで、安定した不動産投資を実現できるはずです。
 
 
 

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