海外赴任中は日本での資産運用の手段が限られますが、海外ならではの金融商品に目を向けることで、資産を効率良く増やせる可能性があります。とくに、赴任期間が長期にわたる場合は、海外在住のメリットを活かして資産形成を図り、将来に備えることが大切です。
本記事では、海外赴任になった際におすすめの資産運用をご紹介します。海外での資産運用は大きなチャンスを得られる一方で、リスクの高い金融商品も少なくありません。メリットとデメリットをきちんと把握したうえで、自分に合う方法を選択しましょう。
もくじ
海外赴任になった際の資産運用の注意点
海外赴任によって日本の非居住者になると、金融サービスの利用にさまざまな制限がかかります。現在利用中の証券口座や保険がある場合、多くの手続きが発生するほか、これまで投資した金融商品の売却を求められる可能性もあるため、出国前の入念な確認が欠かせません。
海外赴任中の資産運用で注意すべきポイントを、現地での投資のリスクも含めて詳しくご紹介します。
証券会社によっては制約がある
日本の証券会社の多くは、非居住者(1年以上海外に滞在する人)に対して利用制限を設けています。証券会社により条件は異なりますが、海外赴任のために住民票を抜く場合、基本的には保有している口座の解約が必要です。国外転出後は、新たな証券口座の開設もできません。
日本の証券会社は金融商品取引法に基づいて業務をおこなう必要があり、海外での取引は許可されていないためです。非居住者として海外で取引をすると、出国先の法令や規制に抵触する危険性があります。
所定の届出をおこなえば、期限付きで証券口座を維持できるケースもありますが、新たな買い付けができない、保有できる商品が限られるなどの制約があります。解約や変更の手続きをせずに非居住者となった場合、口座が凍結されるリスクもあるため、国外転出をする前に取扱内容を確認しておくことが重要です。
運用として代表的な保険に加入しにくい
資産形成のために、養老保険や終身保険、個人年金保険といった貯蓄型保険の利用を検討している方もいるでしょう。しかし、海外居住者が保険に新規加入するには、いくつかの条件を満たさなければなりません。
多くの場合、赴任中でも日本国内に住所と電話番号があり、将来的に日本へ帰国する予定があることが条件となります。連絡可能な住所と電話番号がないと、契約内容の変更や保険金請求などをスムーズにおこなえないためです。保険への加入を検討している方は、住民票を抜く前に契約を済ませておくことをおすすめします。
なお、すでに加入済みの生命保険は、海外赴任中も保険料を払い込むことで継続できるケースがほとんどです。海外渡航届の提出や代理人の選任などの手続きが必要な場合もあるため、加入先の保険会社に確認しておきましょう。
現地の金融商品は帰国後に利用できないおそれがある
海外赴任中に資産運用をするには、現地の証券会社や銀行で口座を開設して、株式や投資信託、保険といった金融商品を購入する方法があります。しかし、現地の金融商品は、その国の居住者向けに提供されているため、日本への帰国後は継続運用できないケースも少なくありません。
また、積立投資などは途中解約するとペナルティが発生する可能性が高く、赴任期間が短い方には向かないでしょう。
海外赴任でもできるおすすめの資産運用
非居住者になると、日本の証券口座は原則として利用できませんが、海外に居住しているからこそできる資産運用方法もあります。また、日本の不動産投資であれば居住地を問わないため、海外に赴任しても運用を続けることが可能です。
海外赴任中におすすめの資産運用を3つご紹介します。
投資信託や株式投資
海外を活動拠点とする証券会社を利用することで、海外赴任先からでも投資信託や株式を購入できる可能性があります。フィリップ証券やIB証券、Firstradeなどが代表的です。
海外の証券会社であれば、たとえばタイに居住しながら、米国の株や債券へ投資するといった取引が可能です。世界中のマーケットにアクセスできる証券会社もあり、分散投資にも向いています。
海外の証券会社を選ぶ際には、口座開設が可能な国のリストを事前に確認しましょう。また、居住国からの送金に対応しているかどうかも重要なポイントです。投資対象国や入金方法、手数料なども証券会社ごとに異なります。
または、制度や言語への理解に問題がなければ、居住国の証券会社で口座を開設するのも一つの方法です。現地通貨で給与を受け取っている場合は、送金にかかる手間や手数料の負担を軽減できるでしょう。ただし、先述したとおり現地の金融商品は帰国後に運用できないことも多いため、解約時の資金移動についてよく検討しておく必要があります。
プライベートバンクの金融商品
プライベートバンクとは、一定金額以上の資産を持つ富裕層を対象に、資産管理・運用などの金融サービスを提供する銀行です。顧客一人ひとりに専任のバンカーがつき、その人の財務状況やライフプランに合った資産運用方法を提案します。
多くのプライベートバンクでは居住地を問わないポータブル口座を開設でき、資産を預けておけばどの国にいても自由に運用が可能です。オーダーメイドのサービスにより、長期的に安定した資産運用を実現できます。また、一般の投資家ではアクセスできない金融商品に投資できる点もメリットです。
ただし、プライベートバンクの口座を新規開設するには、一般的に1億円以上の資金が必要です。海外のプライベートバンクでは、最低預入金額を10億円程度に設定しているケースも少なくありません。ほかにも、職業や家族構成、納税状況などに関するさまざまな審査基準が設けられており、一般の方にとっては利用するハードルが高いでしょう。
不動産投資
すでに国内に不動産を所有している場合、海外へ赴任してもそのまま運用が可能です。家賃収入は、非居住者向けサービスを提供している日本の銀行口座で管理できます。不動産の管理は専門会社に、確定申告は納税管理人に任せればよいため、頻繁に帰国する必要もありません。
また、海外への赴任後、新たに日本の不動産を購入することもできます。日本では、非居住者や外国籍の人に対する土地や不動産購入の法的規制がないためです。ただし、日本に居住していないと、不動産投資ローンの利用が難しくなる点に注意してください。
そのほか、赴任した国の不動産に投資をするという選択肢もあります。人口の増加や経済成長が期待できる国であれば安定した収入が見込めるほか、不動産価格の上昇により大きなキャピタルゲインも狙えるでしょう。しかし、いずれ帰国するのであれば、管理が難しくなるため安易に手を出すのはおすすめできません。また、海外不動産投資には為替変動や税制改正の影響といったリスクも多くあります。
海外赴任先で資産運用をするメリットとデメリット
海外赴任中も資産運用をおこなうことで、将来に向けた資産形成を図れます。とくに円安が続くなか、海外の金融商品へ投資をすることは、資産を大きく増やすチャンスです。
一方で海外での資産運用には、日本にはないさまざまなリスクも伴うため、慎重に検討しないとせっかく貯めた資産が減ってしまうおそれがあります。
海外赴任先で資産運用をするメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット:日本国内よりも金融商品が豊富な国もある
海外で資産運用をする大きなメリットは、幅広い金融商品にアクセスできる点です。とくに、米国をはじめとした金融先進国では、日本よりも豊富な金融商品が市場に出回っています。
多様な国や地域、企業の金融商品に分散投資することで、リスクを抑えた安定的な運用が可能です。
メリット:帰国後の資産形成ができる
海外赴任先でも投資を続ければ、老後や子どもの将来に必要な資金を効率良く増やすことができます。海外の株式や投資信託は、日本に比べて少額から取引できる点や、配当利回りが高い点が魅力です。また、日本よりも高い経済成長が期待できる国に投資をすれば、大きなリターンを得られる可能性があります。
日本でも継続できる証券口座を利用したり、日本国内の不動産に投資したりすることで、帰国してからも長期的に運用できるでしょう。
デメリット:海外の証券会社への送金に手間とコストがかかる
海外の証券会社を利用して、居住国からほかの国に投資をする場合、海外送金の手続きが負担となるおそれがあります。手数料が高くなるほか、慣れない言語でのやり取りに不安を感じることもあるでしょう。送金にかかる日数は、通貨や国によりますが、1週間ほどが目安です。
日本にある資金を活用したくても、日本の銀行はマネーロンダリング対策を強化しているため、簡単には海外送金できません。海外の証券口座を利用したい場合は、帰国後の対応も含めて入金方法を確認しておくことが大切です。また、赴任先で利用できる海外送金サービスがあるかどうかも調べておくとよいでしょう。
デメリット:海外の金融商品にはハイリスク商品もある
海外では、成長性の高い株式や投資信託に投資することでハイリターンが期待できる一方、株価の急落により大きな損失が出るおそれもあります。元本割れのリスクを低減するためには、情報をしっかりと集めたうえで投資先を検討することが重要です。
また、プライベートバンクで扱っている仕組債(しくみさい)やヘッジファンドなども、複雑で不確実性が高い金融商品といえます。十分な知識がないままリスクの高い投資をおこなうと、最悪の場合、大切な資産をすべて失いかねません。
【まとめ】海外赴任が決まったら資産運用についても考えておく
海外赴任をすると、日本の証券会社や銀行をこれまでどおり利用することが難しくなる場合があります。海外赴任が決まったら、国外転出をする前に取扱内容を確認しましょう。場合によっては、これまで積み立てた資産の売却を求められるため、余裕をもって手続きをおこなう必要があります。
また、赴任先の国で新たに投資を始める場合は、帰国後の運用方法も踏まえて検討することが大切です。海外在住だからこそできる、利回りの高い資産運用も多く存在します。リスクをしっかりと把握して、海外赴任中も資産運用に目を向けてみてください。
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